最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)372号 判決 1966年9月16日
上告人 清水正三
右訴訟代理人弁護士 荻矢頼雄
同 中安理
被上告人 杉浦保吉
右訴訟代理人弁護士 河本尚
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人荻矢頼雄の上告理由第一点および第二点について。
原判決の認定によると、訴外新大阪カンツリー株式会社振出の本件約束手形二通に対する上告人の裏書は、右訴外会社の債務を代表取締役個人として保証する趣旨でなされたものであり、所論の前提とするような、右裏書に先立ち、訴外堀川定雄が被上告人の代理人として同会社の債務につき上告人に責任を問うことはしない旨約束したり、上告人が右手形の裏書にあたり、その支払を拒絶するを要しないものと誤信していたという事実はなかった、というのであって、右認定判断はその説示するところに徴しこれを肯認するに足る。そして、右事実を前提とするときは、所論のような前記堀川の代理権の有無や表見代理の成否を論ずる余地のないことは明らかであり、また原判決には、所論のように、前記訴外会社に対する債権が一応棚上げされたものと認定した個所はなく、原判決の認定判断に理由不備や審理不尽の違法は認められない。所論は、原判決を正解しないで、原審の適法になした証拠の取捨、事実の認定を非難し、その違法をいうものにほかならず、採用できない。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)
上告代理人荻矢頼雄の上告理由<省略>